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木造の「継ぎ手」が同じという不思議|田中優コラム #43

「大工ワザ世界頂上決戦!~日本VS.ドイツ~」



人の家でテレビを食い入るように見た。「超絶凄(すご)ワザ!SP「大工ワザ世界頂上決戦!~日本VS.ドイツ~」というNHKの番組だった。ドイツの木造大工はかなりのマニアで世界中の手作業の道具を持っている。当然日本の木造技術にも造詣があり、その技術に対する敬意すら感じられて見ていて気持ち良いものだった。「盾と矛」のような敵意ではなく、互いの敬意が感じられる良い企画だった。

凄ワザの用意したテストは二つ。一つは木材を2.5ミリだけ残してくり貫く技術の時間競争と、二つ目は木材を縦に継ぎ合わせて上から重さを加えていく強度の競争だ。一つ目は日本の大工が勝ち、二つ目はドイツの大工が勝利して引き分けた。ドイツの大工は「今度は競うのでなく、一緒に仕事したい」と言い、 大工同士の連帯を感じさせた。

ドイツの「船大工」



しかし二つ目の勝負はちょっと気にかかる点があった。二つ目の同じ向きの木材をつなぐ方法だが、そう考えれば第一に「金輪継(かなわつぎ)」が浮かぶ。我が家のつなぎ方は「追っ掛け大栓(おっかけだいせん)」だが、最も頑丈なつなぎ方と言えばやはり「金輪継」なのだ。金輪継は簡単に言う と、二本の木を一本にしてしまう技術だ。組み合わせる面を凹凸をつけて刻み、それを真ん中に差し込む四角い「込み栓(穴に差し込んでいく硬い木)」で絞めていく。 込み栓を打ち込むと、二つの木材はがっしり食い込んで長い一本の木になる。この「金輪継」を日本の大工は選んだが、驚いたのはドイツ大工も全く同じ手法を選んだことだ。なんとドイツにも同じような組み方があるというのだ。

ヨーロッパに木工の技術が発達しているのは、北欧から襲ってきたバイキングの影響だ。無敵のバイキングを支えた理由の一つが、バイキングが攻めていくときの木造船の工作技術なのだ。日本でよく聞くのは寺社を造る「宮大工」だが、もう一つの並び称される技術がある。それが「船大工」なのだ。バイキングたちを支えていたのは「船大工」の技術だった。そのバイキングたちはまさに無敵で、フランスに残るサン・ミッチェル寺院以外に不落だった場所はないほどだ。そのためヨーロッパの北海沿岸の各国は、バイキングたちに領地や名誉を与えることで、懐柔しようとした。

その結果残されたのが北海沿岸国の木造技術なのだ。オランダの風車もまた木造で、電気のなかった時代のポンプの役割をさせるために作られた。そこには 「込み栓」が使われている。木造の教会などもこの流れからもたらされたものだった。

ドイツの勝因



それにしても日本と北欧とで、まったく同じ継ぎ手の手法があったのには驚かされた。ただし日本の「金輪継」と違う点がわずかにあった。それが切り口の形だ。日本の金輪継では斜めに切った木材を組み合わせるのに対して、ドイツの手法は全く水平に切ったものを組み合わせるのだ。ドイツの大工はこうして柾目の年輪を切らないことで、強さを保つのだと言った。同様に「込み栓」もまた、柾目を活かして押し込んだ。その結果、ドイツの大工が勝ったのだ。しかしここには別な視点が必要だ。その話は次回に説明しよう。
 
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