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木製品の環境評価の見直し|田中優コラム #233

前回述べた通り、地球温暖化の問題で信じられないほど森林の二酸化炭素吸収量は過小評価されていて、ただ正しく評価するだけで地球温暖化をかなり防止できるという話をした。
この回では、「HWP(伐採木材製品)」の話を紹介したいと思う。
 
「HWP(伐採木材製品)」とは何かというと、木材の炭素吸収量の評価を従来とは違う方法で計算する考え方だ。従来は、森林で生育している時点の炭素吸収能力だけが評価されていた。一方、「HWP(伐採木材製品)」の考え方を導入すると、森林から伐採され、搬出された後の木材もまた「炭素固定」されるものであるのだから、その分も炭素固定分として計上しようということになる。例えば家屋や家具のように使われ続ける木製品は使われた期間分、炭素も固定していることになるだろう。
 
それは、2011年のCOP17で認められた。木材はそれ以前までのように「伐採・搬出された時点」で二酸化炭素の排出として計上するのではなく、「木材が廃棄されて焼却・埋め立てされた時点」で計上するように改善された。これを「HWP(Harvested Wood Products 伐採木材製品)」というのだ(下図参照)。

 
それをまともに考えれば、杉の木が再度育つまでの50年を超えて使われ続ける天然住宅の建物の木材は、明らかに炭素の貯蔵だ。だから長く住むほど二酸化炭素排出の対策になるところがこれもまた過小評価につながる計算がなされている。
 
前回述べた、南アフリカ共和国・ダーバンで開催されたCOP17で、「森林経営による吸収量の算入上限値は、各国とも基準年(1990年)総排出量の3.5パーセントまで」とされてしまっているのだ。木製品を長く使うこと、木造住宅に長く住まうことはほとんど評価されていないことになってしまう。
しかし、長く住める家を建て、実際に長く住むことができると、実質的には炭素排出量に影響を与え、温暖化の防止につながっている。

例えば天然住宅で家を建てたとしよう。これはもちろん「伐採木材製品」だから、建築時点では二酸化炭素を排出しない。しかも「焼却・埋め立て」されるまでの間だから、長寿命に造っている天然住宅では仮に3世代が住み継げば、100年以上炭素が貯留されることになる。さらにもし解体したとしても、現在「くりこまくんえん」で実施しているように、木材を木炭化して土に埋設したとすれば、その後もまた貯留されることになる。こうなると炭素排出は限りなくゼロに近くなるはずだ。
 
この木炭化の取り組みは、くりこまくんえんのグループであるサスティナヴィレッジのプロジェクトの一環として行われ始めている。今は「くりこまくんえん」だけの特殊事例のように見えるが、「4パーミルイニシアチブ」の広がりと共に各地でもゴミを燃やすのではなく木炭化するのが当たり前になっていくだろう。現に山梨県で進められている「4パーミルイニシアチブ」では、剪定した果樹の枝などを木炭化しているが、これが他の木材品に広がるのも時間の問題だろう。
  
そうなった時に問題となるのは、木炭化する木材に添加された「殺虫剤・忌避剤・接着剤」などだ。このような薬品を含む木材は、環境と人体に影響があるので炭化させるべきではない。実際、今現在も燃料用の「木質ペレット」の原材料として住宅解体材は取り扱えないことになっている。建築廃材も同様だ。しかし、天然住宅の家屋にはそうした「殺虫剤・忌避剤・接着剤」は使っていないので、十分「木質ペレット」にも使えるし、炭にして土に混ぜたとしても何の不安もないのである。

だが上に述べた通り、「第二約束期間については、2011年に南アフリカ共和国のダーバンで開催されたCOP17において、「森林経営」による二酸化炭素吸収量を排出削減量・吸収量に算入することが義務付けられました。また、「森林経営」による吸収量の算入上限値は、各国とも基準年(1990年)総排出量の3.5パーセントとされました」という問題がある。

 「天然住宅」や、そこで勧める「すまうと」の家具、「サスティナライフ森の家」の家具など、使い始めたら末代まで廃棄されない木材は、数年で二酸化炭素の排出源になることなどないのだ。もしその家具が不要になったたら、「くりこまくんえん」に持ってきてほしい。受けとったら、そこで木材ガス化炉に入れてガス化し、冷暖房の熱と発電など地域で使うエネルギーにすることができる。そして、その度に残るのは木炭だから、土に入れても良いし、またさらに燃料として使ってもいい。

つまり地球温暖化の原因となるものがないのである。これが天然住宅の今実現しているやり方で、問題となる二酸化炭素の排出量を減らすのではなく、そもそも出さない。山で使う重機もまた「廃食用油」由来のバイオディーゼル油を使っている。

この先見性を知ってほしい。そのための努力を知ってほしい。「くりこまくんえん」では植林した木が下草に覆われてしまうのを防ぐために、牛を放牧して下草を食べてもらっている。しかしそれを始めた時、周りからはバカ呼ばわりされた。

そうバカに見えるのだ。「先見性がある」ということは。
 

 

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