建主さまに聞いた、子育てのお話
「みんなの子育て」プロローグは こちら
(第一話)「子ども達の日々の安心をつくるもの。大切にしている空間のしつらえとは?」
(第二話)「妊娠中のこと、子育てに悩みは尽きないけれど・・」
・お話を伺った人
神奈川県大磯町在住Yさんご夫婦
会社員の夫、専業主婦の妻。8才と4才の姉妹の4人暮らし。奥さまは天然住宅元スタッフの友人。第一子出産後にシュタイナー教育と出会い、長女はシュタイナー系の幼稚園へ。土地探しを経て、2017年に神奈川県中郡大磯町に天然住宅を建築。最近の楽しみはご近所さんとの畑活動だそう。
天然住宅との出会い。選んだ理由
奥様(以下、Tさん)が天然住宅を知ったのは、上のお子さんがまだ赤ちゃんだった頃。通っていた地域の子育て支援センターで仲良くなったママ友が、たまたま天然住宅のスタッフだったというのがきっかけです。
その後、彼女の家で開催されたお住まい見学会に参加し、「建てるなら天然住宅がいい!」と思ったそうです。
始めは難色を示していたご主人(以下、Sさん)ですが、Tさんの説得に耳を傾けるうち、少しずつ気持ちに変化が生まれます。
もともと環境問題に関心があったこと、天然住宅の理念が、自身の感性や大切にしたいことにも通じていて、「家を建てることで環境をよくする関わりができる」「作り手や生産者を応援できる」ところに共感したそうです。
Sさんはある日、天然住宅に電話をかけます。
その時たまたま対応したのが、後に家づくりを担当することになった営業の田中でした。
電話越しではあったものの、彼の親身さや誠実さが伝わってきて嬉しかったといいます。
Sさんにとっては、家そのものの良さもさることながら、「誰にお願いしたいか」も家を選ぶ際の大切なポイントでした。田中とのやりとりが「天然住宅で我が家を建てよう」という決意につながりました。
家も大切。でもどこに住むかもとても大切
▲建築前にご家族で自邸に使う柱を伐採しました
Yさんご夫婦が家を建てる前にやらなくてはいけないことが土地探しでした。当時住んでいた逗子市内や、Tさんのご実家周辺を中心に探していたものの、予算の制約もあり、なかなか「ここ!」という場所には巡り会えませんでした。
そこでエリアの範囲を広げると、大磯という街が選択肢に入ってきました。
思いの外、暮らしやすそうな印象を受けたそうです。
土地探しに際し、僕は周辺環境をしっかりと調べました。今はまだ親と行動することがほとんどですが、子ども達が大きくなれば夜道をひとりで歩くことになる。だから、気になる土地を見つけたら時間帯を変えて、駅との間を歩きながら確認しましたね。(Sさん)
そうして見つけた大磯の土地。海も山も近く、自然環境は豊か、近所の人も気さくな方ばかり。
どんな家を建てるのかももちろん大切ですが、どこに建てるかもとても大切だと思うんです。はじめは予算で妥協した面もありますが、大磯はつくづく子育てがしやすい街だと思います!(Sさん)
子どもと一緒に参加した家づくりがもたらしたもの
▲建築中、漆喰の壁塗りを体験。上のお子さんが熱心にがんばってくれました
ご夫婦が口を揃えておっしゃるのは、子ども達と一緒に家づくりに参加できて本当によかったということ。
普通、小さなお子さんがいると大変だと思いがちですが、何か理由があるのでしょうか?
打ち合わせから子どもも一緒に家づくりに参加できたことは良い経験になりました。
ダイニングとリビングの間に大きな柱がありますが、これは家族で宮城県の山に行き、自分たちで伐ったものなんです。壁の漆喰塗りもやらせてもらいました。
娘たちは、自分たちの家を作ってくれた人の顔をちゃんと覚えていて、事あるごとに「○○さんが作ってくれた」と言うんです。子どもながらにちゃんと分かっているし、届いているのかな、と嬉しくなりますね。(Sさん)
▲上棟式のひとこま。込み栓打ちの体験です
▲今では珍しい餅まきもしました。ご近所の方をはじめ、たくさんの方が集まってくださいました
▲自分たちで伐採した柱。太いね〜^^
家づくりで工夫したところ
(第一話でも紹介した)「壁の色を薄いピンク色にする」というのは、シュタイナー教育の考えにも通じています。母親の胎内の色を模した色は精神的にも落ち着くと言われていて、これはぜひやりたいと思っていました。
私自身、子育てするにあたり、もともとあまりテレビを見せないで育てたいという考えがありました。テレビを消すことで、子どもとの時間が持てる。その時間も大切にしたかったんです。
今、子ども達が少しずつ大きくなってきて、本人たちが楽しみにしている番組もあるので、ごくごく緩やかではありますが、暮らしの中でテレビが中心にならないような意識は常々持っていますね。
でも制限するばかりだと、子どもにも負荷がかかりますから、他に夢中になれる遊びをちゃんと用意することも大事にしています。(Tさん)
そのような思いを大切にするからこそ、「テレビの収納」にはひと工夫がされています。
造り付けの棚の中にテレビを収納し、普段、テレビが目につかないようにしています。コードが表に出ることもないので見た目もすっきり。これはおすすめですよ。(Tさん)
▲正面の棚の右側にテレビを収納しています
Yさんの家の広さは1階と2階合わせて25坪、その他にロフトがあります。
けっして広いとは言えませんが、この広さも気に入っているそうです。
子どもたちの気配が常に感じられます。木の家だと2階の音が1階にもよく聞こえますが(笑)、今何やっているのか、姿が見えなくても何となく想像がつくところがいいなと思っています。(Tさん)
▲2階の子どもスペースは仕切りを設けず、広々と
本当の豊かさとは?家を建てたことがきっかけで変わった価値観
Sさんは、家を建ててから少しずつ価値観が変わってきたそうです。
引っ越してきたその日にお隣さんからバーベキューをやるからおいでと誘われたんです。これには驚きました。それに、朝、駅まで歩いていると近所の人が挨拶してくれるんです。中には「駅まで乗せていこうか?」と声を掛けてくれるおじさんもいて(笑)最近だと、近所に住む方から、一緒に畑をやらないかと誘ってもらいました。完成後も壁を塗ってくれた左官屋さんに相談することがあったりと親交は続いています。
それまでの自分にとっての豊かさって、物理的なものが基準でした。サーフィンとか広い庭とか。でももし、広い庭でバーベキューがしたかったら、近所の海や畑でやったり、バーベキュー好きな友人宅に混ぜてもらえばいい。
そう考えると、必ずしも自分の家に広い庭が必要な理由はなくなるんですよね。それよりも、今は数珠のようにつながっていく人との関係性のほうが大切で、暮らしの中でこの関係性を大切に築いていくことに豊かさを感じているんです。(Sさん)
▲2018年に訪問させていただいた時に撮影した写真
Yさんご夫婦の家づくりの話をお届けしました。
個人的に、Sさんがおっしゃっていた「(家は)どこに建てるかもとても大切」という言葉が心に残っています。
私は現在、賃貸暮らしです。子どもが生まれてからも、何度か引越しを繰り返してきました。探し方といえば、沿線や築年数、家賃や広さといった基本的な条件でばかり。一生住むわけじゃないからという妥協もあったかもしれません。
でも今の家に引っ越すとき、少し視点を変えてみたんです。
「この景色を毎日見て暮らしてみたい」とか、「こんな場所で子育てしたい」、そんな気持ちに素直になって探してみたら、日々はどんな風に変わるのだろう。そんな好奇心がわきました。
それは少し贅沢な探し方だったかもしれませんが、今ではそうしてよかったと心から思っています。
毎日見る景色が自分の心にどんな作用をもたらしてくれるか、じんわりと、しみじみとですが、変化を感じているからです。
私は「景色」に軸を置いて探しましたが、大事にしたいモノサシは、人によって違うはず。コミュニティが充実しているとか、自然環境が豊かだとか、実家のそばとか。
持ち家でも賃貸でも、ある一定期間そこに根を張り「暮らす」ことには変わりません。Sさんのお話を聞きながら、この考え、これからも大事にしていきたいと思いました。
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